膝は、体の骨の中では最も大きく太く、そしてとても複雑な関節です。古代化石の発掘現場から人骨が発見された時に、人間の体の中では、最長の骨である大腿骨(膝を形成する骨)から、おおよそご遺体の身長を予測する事ができるようです。
そんな大腿骨と、もう一端にある脛骨、膝蓋骨(膝のお皿)この三つの骨から膝関節は組みあがっています。大腿骨(太もも)と脛骨(弁慶の泣き所がある骨)が、主に関節を構成し、膝蓋骨は、可動性をスムーズにしている補佐的な要素が高い骨です。
膝関節は、折りたたむように曲がるだけの一方向の運動から「蝶番関節」と呼ばれています。文字の通り、蝶番・ドアの開け閉めの様に、曲げるだけなのです。膝はただただ曲げて伸びるだけ、それなのに最も体内で大きく、とても複雑な関節とは、どういう理由からそうなっているのでしょうか?
膝蓋骨は、体内では「種子骨」という部類に属していて、実は案外とレア度の高い骨の一つなのです。軟骨は半月板、靭帯は前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯。筋肉は、大腿四頭筋腱、大腿二頭筋、半膜様筋腱、大内転筋腱などで構成されています。太腿の筋肉は、体内で最も大きい力を発揮する所です。強大なチカラを支えるには、一方では強い固定が必要なのです。
「曲げる・伸ばす」という簡単な運動しかしないのに、問題が多い『膝』。厳密には伸ばす時に、若干外側に回り、曲げる時に若干内側に回転しています。内側にある半月板は、体重の約60%の重量配分を受け持つため、大きく薄いという、外観的な特徴があります。そして外側にある半月板は、小さく厚い形をしています。骨や半月板の形状が、もともとフラットではないので、実際には捻じりながら運動を行っているわけです。そしてこの「捻じりの運動」というのは、力学的にはとても不安定です。その上に、複雑な形状でもあるため、構造上多くのパーツで頑丈に支えなくてはなりません。
強固にするからには、曲げ伸ばしの運動以外の動きは許容幅が少ないという欠点もあります。特に膝は、横方向への動きには脆く、スポーツで横から衝撃が加わる様な事があると、これらの半月板や、靭帯に負担が掛かります。その結果起こるのが、「半月板損傷」や「側副靭帯損傷(側方運動を固定する靭帯)」です。
膝関節は、足首と股関節の中間に位置しています。一見、痛みの震源地に問題があるように思われがちですが、膝は、上部は大腿骨、下部は脛骨によって形成されています。ところが、筋肉の走行を見れば、この2つの骨に近接して走行する筋肉はほぼ無い(膝窩筋のみ)。一方で、殆どの筋肉は、骨盤から発生し、膝下の脛骨に付着しています。つまり、膝が独自で運動を行っているのではなく、骨盤からの筋収縮によって、膝が動かされているということになります。このことから、膝関節の異常は、膝単体で発生しているのではなく、骨盤の捻じれや曲がりが、結果的に、膝の運動を歪(いびつ)にしているということになります。下の図は、それをイメージしたものです。柱が骨盤であって、膝は力を梃の支点として、最大筋力を発生させます。膝である滑車は、斜めから引っ張られてしまうと、ロープが脱輪してしまいます。これによって起こるのが膝痛です。これらのことから、骨盤をいかに上手く調整できるか?というのが膝痛のポイントとなります。